ふるさと怪談トークライブ

御礼

 

 

 あの日から15か月余りが過ぎました。東北では初夏とはいえまだまだ涼しい日が続いています。穏やかな青空を見ていると、あの日から続いた混乱の日々がまるで悪い夢のようにも感じます。実際、パッと目が覚めたらみんな夢だった……なんてことにならないかな、などと仲間たちと話すことがあります。

 

 それにしても、東雅夫さんをはじめとして、全国で〈ふるさと怪談トークライブ〉を繰り広げて下さったみなさんには、感謝の言葉もありません。

 

 2010年に「遠野物語刊行100年」を期して〈みちのく怪談プロジェクト〉を立ち上げた私たちでしたが、あの日を過ぎてすぐに「鎮魂」の意も込めて、プロジェクトの継続を決意はしました。とはいえ、実際にはあまりの大混乱に自分たちの生活を建て直すのに精一杯、プロジェクトを継続しようにも手がかりも足がかりもありませんでした。

 

 そこに飛び込んできたのが〈みちのく怪談プロジェクト〉支援のために全国で〈ふるさと怪談トークライブ〉を開催するという東さんからの連絡でした。

 

 一同、背中をどやしつけられたような思いでした。先行きがまったく見えない状況のなかで、行く手にひとつの目標を見いだすことができた思いがしました。被災地の外のみなさんが私たちを見守ってくれているのを知って、高まっていた孤立感がふっと軽くなったのを覚えています。

 いつまでも呆然としてはいられないと、私たちが前に一歩踏み出す契機に、間違いなく〈ふるさと怪談トークライブ〉はなってくれました。

 

 15か月が過ぎて、私たちは新しい日常をなんとか築き上げようとしています。被災地の出版人として震災関連書籍の編集制作に追われる日々が続いています。

 第2回〈みちのく怪談コンテスト〉も無事に終えて、プロジェクト関連書籍の刊行を急がなければならないところですが、こちらもなんとかこの夏を迎えて動き出せそうです。みなさんからお預かりした寄付金は、これからのプロジェクト継続のために大切に使わせていただきたく思っております。

 ほんとうにありがとうございました。

 

 今年から、みなさんから寄せられたご厚意は『遠野物語』のふるさと、岩手県は遠野市の遠野文化研究センターが主宰する「三陸文化復興プロジェクト」に送られることとなりました。復興の見通しも立たないまま、被災地では苦難の日々が続いています。

 家を、町を。大切な家族や仲間たちを津波に呑まれながら、不便な仮設住宅で生活再建をめざす万余の被災者がいます。津波に呑まれた一面の荒野にしっかりと人の営みが蘇るのは、5年後なのか、10年後なのか、誰にもわかりません。東北には、みなさんの助けを待っている人たちがまだまだたくさんいます。どうかこれからも被災地にこころを寄せていただけることを願って、筆を擱きます。

 

 

 

有限会社荒蝦夷/東北怪談同盟


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