「ふるさと怪談トークライブ」企画趣意書【これまでの活動】 2011年3月11日に発生した東日本大震災と原発事故は、東北地方を中心に、多くの人命と家屋と土地を瞬時にして奪い去りました。震災から一年余を経た今も、被災地は復旧に程遠い状態です。 犠牲になられた方々の霊(みたま)に、慎んで哀悼の意を表します。 その前年(2010)から「みちのく怪談プロジェクト」(※1)を推進してきた私たちは、プロジェクトの母体である仙台の出版社「荒蝦夷」が、震災により深甚な被害を被ったことを受けて、同プロジェクト支援のために急遽「ふるさと怪談トークライブ」(※2)を起ちあげ、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地で有志の皆さまと共にチャリティ目的の公演活動を続けて参りました。 何の展望もなく徒手空拳で臨んだボランティア事業でしたが、幸いにも怪談と文芸を愛する数多くの個人・団体の御理解と御支援を賜り、プロジェクトのシンボルであり支柱でもある「みちのく怪談コンテスト」の単行本を刊行するに足る資金を、この一年間で集めることができました。 ここに更めまして、御賛同・御協力を賜りました全国各地の皆さまに、篤く御礼を申しあげます。 また荒蝦夷も、懸命な自助努力により倒産の危機を克服、震災前にもまさる精力的な出版活動に取り組み、昨年の暮れには「第二十七回梓会出版文化賞新聞社学芸文化賞」を受賞するに至りました。 【活動継続にあたって】 こうして所期の目的は、ひとまず達成できましたが、私どもは「ふるさと怪談トークライブ」の活動を、今後も継続してゆくことを決意いたしました。 理由は二つあります。 第一に、復興へ向けて歩みだしたとはいえ、東北地方の置かれた現状は、決して楽観できるものではありません。それどころか、震災からわずか一年余にもかかわらず、早くも記憶の風化を懸念する声すら聞こえて参ります。 「忘れはしない。忘れさせはしない」(赤坂憲雄)――土地土地に刻まれた古今の伝承を、怪談として語り留めることによって、私たちは、あの惨憺たる日々に心した覚悟を、未来へ伝えてゆきたいと思うのです。 そのことに直結して、第二の理由があります。 ふるさと怪談トークライブを各地で開催する過程で、さまざまな繋がりが生まれました。開催地の人々の間の繋がりから、開催地相互の繋がりまで。 みちのくと琉球が、関東と関西が、いま「怪談」による聯繋を模索しはじめています。 着実に形成されつつある「ふるさと怪談」聯繋の環を、たった一年限りで終わらせることはもったいない、今年もぜひ第二回を開催したいと思う……そんな頼もしいお申し出を、各地の同志の皆さんから頂戴しました。 もとより、否やはありません。 かくして私たちは、ふるさと怪談トークライブの継続運営を決意した次第です。 みちのくに思いを馳せつつ、みずからに所縁ある地域(=ふるさと)の怪談を掘り起こし活性化させてゆくこと。そして各地の聯繋によって、被災地のみならず日本列島津々浦々において、怪談と文芸による地域文化の継承作業を息長く続けてゆくこと――これが「ふるさと怪談トークライブ」の新たな理念となります。 御理解と御賛同を賜れましたら幸いです。 ふるさと怪談トークライブ代表発起人
東 雅夫
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【発起人/運営責任者】 東雅夫(ひがし・まさお) 1958年、神奈川県横須賀市生まれ。アンソロジスト、文芸評論家、怪談専門誌「幽」編集長。 早稲田大学文学部卒。1982年に研究批評誌「幻想文学」を創刊、2003年の終刊まで21年間にわたり編集長を務めた。近年は各種アンソロジーの企画編纂や、幻想文学・ホラーを中心とする批評、怪談研究などの分野で著述・講演活動を展開中。評論家として「ホラー・ジャパネスク」や「800字小説」などを提唱。 2011年、『遠野物語と怪談の時代』(角川学芸出版)で第64回日本推理作家協会賞〈評論その他の部門〉を受賞。 NHKテレビ番組「妖しき文豪怪談」「日本怪談百物語」シリーズ等の企画監修や、「幽」怪談文学賞、ビーケーワン怪談大賞、みちのく怪談コンテストなど各種文学賞の選考委員も務める。 著書に『怪談文芸ハンドブック』(メディアファクトリー)『遠野物語と怪談の時代』(角川学芸出版)ほか、編纂書に『文豪怪談傑作選』(ちくま文庫)『伝奇ノ匣』(学研M文庫)『てのひら怪談』(ポプラ文庫)の各シリーズほか。 |
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